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Bradford Cox [TEENAGE]

DEERHUNTERのフロントマンでソロプロジェクトATLAS SOUNDとしても知られるアトランタのミュージシャンBradford CoxがArthur Russellのドキュメンタリー『Wild Combination:A Portrait of Arthur Russell』やPee-wee Hermanを演じたPaul Reubensの生涯とそのキャリアを描いた最新作『Pee-wee as Himself』などでも知られるニューヨークの映画監督Matt Wolfの依頼を受けて制作。2014年にアメリカで公開された同監督の映画『TEENAGE』に合わせ監督とエディターが、Bradfordが初期のカットのみを見て短期間で作ったという膨大の曲の中から選出し、2014年3月11日に サウンドトラックとしてデジタルリリースのみで発表されたのが今作。 映画は『England’s Dreaming』の著者としても知られる音楽ジャーナリストJon Savageの原作『Teenage:The Prehistory of Youth Culture1875-1945』に基づき当時の貴重なアーカイブ・フッテージと共に19 世紀後半から20世紀前半にかけてのユースカルチャーを観る者と一緒に発見していく型破りなドキュメンタリー映画で、俳優陣によるナレーション以外は無音であり全編がほぼモノクロの映像と音楽のみで構成されている。監督のMatt Wolfは当時のインタビューで「早い段階から歴史的な映像とBradford Coxのオーガニックな手法で作られた現代的な音楽を合わせる事を考えていた。」と話しており、このサウンドデザインがいかに映画にとって大きな役割を担っているかが伺える。

その厳選されたトラックには80年代のニューヨーク、非営利のアートコミュニティスペースThe Kitchenに幼少期から立ち歌っていたという当時12歳のボーカルChandra Oppenheimがフロントを務めたポストパンクバンドCHANDRA 『Kate」の1曲を除き、他は全てBradford Coxが作曲したインストゥルメンタル16曲が収められており、淡いサウンドウェーブが呼応する神秘的な 「Natural Harp Monitor」アンティークの映写機を回しているかのようなノイズと放蕩なリバーブが混沌の時代を想像させる「Skeleton Disk Loop」跳ねるようなミドルテンポのリズムと遠心力のあるシグナル、終盤のアウトロで動に転じるドラミングが破天荒な「Snow on Cape」キラキラとした電子音の粒子が宙に舞って溶け込むような「New Prairie Blackout Pattern」重厚で不穏で心が騒めく音世界の「Canopy」ダイナミックでトリッピーな「Daphne Duck」牧歌的で多彩なサウンドが爽やかにループしていく「Harlem Crepescular」チャンキーなメロディと賑やかなシェイカーの重なりが楽しい「Paprika Expose」テープリールを逆回転させて徐々に崩壊していくような荒涼とした「Pastel Ruins」甘く溶ける夢心地なムードの音の振動が同期して広がっていく「Milk Glass Metronome」アンティークのオルゴールをひらいたような「Planetarium」快活で陽気な音色がスイングする「Doctor October」 穏やかで暖かいムードのループが心地いい「Wireless Fantasy No.1」ロマンティックで耳に心地よいギターのリフレインが温度をあげてしなやかに浸透していく「Dream Logic」脈打つような鼓動に閃光が絡み合い心踊る「Spanish Plastic」煌めきのある旋律にぐいぐいと解放されて突き進む疾走感、まるでティーンの高揚のように温度が加速していく「VHS Dream(TEENAGE)」 でラストを締めくくる。ダブ、アンビエント、クラウトロック、 Daphne Oram、Laurie Spigel や Vladimir Ussachevskyらの影響もみられる実験的で遊び心が潜むエレクトロニクスと、音楽的な要素もバラエティに富んだ、魅力的で粒ぞろいな楽曲にはそれぞれコンセプトも感じられ、プリミティブに音を何層も重ねつつモダンなポップネスを再構築するBradford Coxの高い演奏センスと創造力が溢れる程ふんだんに詰まったアルバム。 DEERHUNTER、ATLAS SOUNDの往年のリスナーには勿論、広く色々な人達に知ってもらって是非とも長く愛聴されて欲しい。

[Degital Release/Previews] 
apple music 
Spotify

[Matt Wolf Web Site]
Matt Wolf / TEENAGE


このプロジェクトは2023年、ふいにNormal Screenさんに声をかけてもらい、東京と大阪で映画『TEENAGE』の個人上映をさせてもらう事になって以来、ずっと心の中に思い描き続けていたもので、その構想やプロセスも含め約 2 年もの月日がかかりましたがBradford CoxとMatt Wolf監督のご尽力とご協力のおかげで500本のみ限定で制作させてもらえる運びとなりました。

ジャケットにはBradfordが選んでくれた写真のうちの 1 枚、劇中にも出てくるジャーマンスウィングボーイのモデルで実在した無名のティーンエイジャーTommie Scheelの実際の写真をMatt Wolf監督に手配してもらい今回のリリースの為だけに新しくアートワークを作成しています。

最高なお二人と一緒にこの素晴らしいアルバムを、ユニーク且つオリジナルなカセットテープとして形に残せた事がとても嬉しく光栄です。お手にとって頂けた皆様にとっても、大事なカセットの一つとして楽しんでいただければ幸いです。
 

Cascade Delete
Nahoko Otsuka
 




CASCADE
 DELETE












A MUSIC LABEL 
BASED ON
THE SPIRIT
DO IT YOURSELF



 
CASCADE DELETE


NAMED BY
LOCKETT PUNDT
(LOTUS PLAZA/DEERHUNTER)

THE LOGO DESIGNED BY 
ALLEN C TAYLOR
(LOTUS PLAZA/MIRROR MODE)

FOUNDED BY 
NAHOKO OTSUKA










 

レーベル名のこと。
ただ翻訳するならDeepLなりChatGPT 等のAI勢が、いくらでもきれいに訳してくれる時代に、あえて私に依頼してくれたのだから、その名が生まれるに至った、NahoさんとLockettさんのやりとりからここに記すことにする。

**
「実は、カセットレーベル設立しようと思って。」
NahoさんからLockettさんへの唐突な報告メールは、次のように続く。
「私たち、40代に、なったやん? 私にとっては、待ちわびた40代、きっと人生で一番面白くなる頃って思ってたから。子ども達も大きくなってね、
”Life is short/YOLO(You only live once)”って、改めてすごく感じる。だから、本当に好きなことに時間を使いたい。
私にとって、音楽レーベル設立・運営することが、それ。で、Lockett、この小さなレーベルに名前つけてくれない?」

Lockettさんはこう返した。
「40代を生きることについて、似たようなことを考えていた。わくわくすると同時に、すべてがあっという間に過ぎていくことをより実感しているから、
Nahoには共感しかない、好きなことをし、好きな人と一緒に過ごしたいね。
で、レーベルの名づけを依頼されてすぐ、これだと思った。
”CASCADE DELETE”
-プログラミング用語で、あるものが削除されると、それに紐づく全てが同時に削除されることを指すのだけど(「カスケード」の部分)。
これって、40代になることだったり、パンデミックの余波に、なんだか重なる気がして。友人、アイデア、夢、人間関係などが "削除" され、自分の人生全てに波及した。そうやって、ここに残っているもの/ことこそが自分にとってより大切で、それが今、よりはっきりと分かる。

”CASCADE DELETE”、とにかく、この言葉が頭から離れなかったんだ。 
**

まるで、Nahoさんからのメールを待っていたみたいに、Lockettさんの頭の中から出力された”CASCADE DELETE”という言葉。
ところで、Nahoさんが送った最初のメール、Lockettさん側のメール管理システムの諸事情により、タイムリーに読まれることなく、しばらく埋もれていたらしい。滞留した未読メールたち、選択ボックスに✓を入れて、一括削除されたんじゃないかなと想像する。
Nahoさんからのメールは、そうやって余計なのが削除された後に残る大切なもののひとつだったわけで、このレーベルがCASCADE DELETEたる由縁。

translated by Kiyoko Bartels
 

I've been thinking in very similar terms about being 40. I'm excited and also more aware of how quickly everything passes, so like you, I want to spend it doing the things I love and being with the ones I love.
I think it's really cool that you want to start a label, and you should! I would be absolutely honored to name it ( if you like something I suggest! ).
There is one name I have right away that I've been saving, and it also feels relevant to getting older ( in my opinion ).
The name is "CASCADE DELETE".
It's a programming term that refers to when one thing is deleted, it then deletes everything related to it ( the "cascading" part ).
I found it somehow fitting to turning 40 as well as the aftermath of the pandemic. Friends, ideas, dreams, relationships etc were "deleted" and sort of had this ripple effect across my life.
I feel like the things that remain are the more important and I'm more aware of that now. Anyways, that's why this phrase has stuck with me. I can think of other names if this isn't the vibe you're going for.
I hope you're doing well and it's great to hear from you. I'm very happy you are pursuing something for the love of it.

Quotes by Lockett Pundt